Eurasia Unit for Border Research (Japan)

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What's New Archives

2017.06.13

ボリショイ劇場バレエ団来日公演によせて

2017年4月27日、安倍首相との会談後の記者会見において、来年を日本とロシアのПерекрестные Года[交差する年]とすることに合意したとプーチン大統領は発表した。 つまり、2018年は「日本におけるロシア年」、「ロシアにおける日本年」として、政治、経済、文化を含むあらゆる領域における交流の促進が図られるということなのである。

 両国関係に変化が訪れることが期待されるその2018年に先駆けて、2017年6月4日から「Russian Seasons Japan 2017」が日本において幕開けした。Russian Seasonsとは、これからロシアが世界に向けて展開していくロシア文化喧伝の一連の企画のことを指す。筆頭に選ばれた日本では、全国の40か所以上、200を超えるイベントが予定されている。

 幕開けを飾ったのはボリショイ劇場バレエ団の公演だった。初日の公演『ジゼル』には安倍首相も訪れ、後日プリマ・バレリーナのスヴェトラーナ・ザハロワが首相官邸を表敬訪問した。

今年はボリショイ劇場バレエ団初来日60周年記念の年にもあたっており、日本とロシアの長年にわたる文化交流の実績を記念する意味でたいへん華々しいスタートを切ることができたといえるだろう。

ところで報告者は、6月7日に上野の東京文化会館で『白鳥の湖』(チャイコフスキー作曲、グリゴローヴィチ改訂振付版)を観劇する機会に恵まれた。ワガノワ・バレエ・アカデミーの学生時代から注目していたオリガ・スミルノワ、ノーブルな佇まいが魅力のセミョン・チュージンが主役を務めた舞台は、ロシア・バレエを愛し続けている報告者にとって、とてもひとことで感想を言い表すことはできない。ボリショイというブランドに改めて感服した次第である。

Russian Seasonsといえば、かつて20世紀初頭に世界を席巻したセルゲイ・ディアギレフが率いたバレエ団「セゾン・リュス(ロシア・シーズン)」が念頭におかれているものと思われる。しかし個人がオーガナイズしていたセゾン・リュスよりも、国家プロジェクトの様相を呈する今回の文化交流企画はむしろ1950~60年代の状況に似ている。日露の政治的な関係はつねに平穏だったとは言い難い時期にあったが、次々にやってきたソヴィエト・ロシアからの文化団体を日本の観客は喜んで迎え入れたのだ。

「芸術家は政治家や外交官ができないことも成し遂げられる」というのは、去年マリインスキー劇場で行われた日露バレエ交流を記念した展覧会での同劇場総裁ヴァレリー・ゲルギエフによる挨拶の言葉である。芸術が持つ力をよく知る人物の発言は重いものがある。

1950~60年代の文化交流においては、次々に文化団体を派遣してくるソヴィエトに対して、日本は単純に数の上で遅れをとっていた。しかし来年こそは、日本もさらに積極的に文化を発信していくことを期待してやまない。それが結果的に世界における日本の存在感を高める絶好の機会となりえるのではないだろうか。



斎藤慶子

2017.06.03

第59回 北大祭 研究所・センター合同一般公開

サイエンストーク市民講座
ボーダーツーリズムの魅力を写真で語る:稚内・サハリンからのメッセージ

岩下明裕 & 斉藤マサヨシ

2017年6月3日、スラブ・ユーラシア研究センターにおいて、岩下明裕教授と写真家の斉藤マサヨシ氏による「ボーダーツーリズムの魅力を写真で語る:稚内・サハリンからのメッセージ」が開催されました。岩下教授の質問に応じる形で、斉藤氏が10年以上にわたってサハリン全島をめぐり撮影した写真について語りました。日本が統治していた時代のサハリン(樺太)の歴史を説明しながら、現地に今も残されている日本人の足跡の写真を紹介しました。廃墟となった王子製紙の工場や、鳥居のみが立っている神社跡地などの写真は、「サハリン」というボーダーツーリズムの現場の魅力を伝えました。斉藤氏の説明のなかで印象的だったのは、ご本人の写真家としての信条を表すもので、ただ写真をとって帰るだけではなく、現地の人々と交流をすることにより、さらに意味がある写真を撮ることができるのだというお話でした。そのお話を聞いてから改めて工場跡地の写真を見ると、廃墟の中で子供がいかにも楽しそうに遊んでいる活き活きとした様子に気づくことができました。

今年中に、北海道大学出版から斉藤マサヨシ氏による写真集『サハリンに残る日本』

が発売される予定です。斉藤氏が写しとったサハリン(樺太)の写真の数々は、ボーダーツーリズムとサハリンのさらなる魅力を皆さんにお届けするものとなることでしょう。


2017.06.01

キックオフ・シンポジウム「グローバル世界と日本の現在と未来を考える」参加記

千葉大学が2017年4月に設立したグローバル関係融合研究センターによるキックオフ・シンポジウム「グローバル世界と日本の現在と未来を考える」が2017年6月1日、千葉大学で開催されました。基調講演に続くパネルディスカッション「グローバルな危機にどう対処するか:欧米、アジア、中東の視点から」では興味深い議論がなされました。

 ヨーロッパに関しては水島治郎氏(同センター教授)が「ポピュリズムの拡大、岐路に立つ先進デモクラシー」、アジアについては石戸光氏(同センター教授)が「トランプ政権とアメリカ・ファーストの影響」、そして中東については酒井啓子氏(同センター長)が「内戦、『イスラーム国』の果てにあるもの」というテーマでそれぞれご報告されました。全体を通底する枠組みとしては、言説や言葉が政治に果たす役割をどのようにみなすかという観点で論議がかみ合い、また要領のいい進行役(同副センター長の大石亜希子教授)の差配もあり、実り豊かな成果が得られました。

 世界の政治現象をどのように鳥瞰するかは、ボーダースタディーズの貢献できる分野でもあり、今後、同センターが主催する事業について、本ユニットも貢献する予定です。

(岩下明裕)

2017.05.29

【掲載】Abe's Diplomacy at a Crossroads: The Hidden Side of the Japanese-Russian Summit

【掲載】Abe's Diplomacy at a Crossroads: The Hidden Side of the Japanese-Russian Summit

岩下明裕教授による、日露首脳会談(2017年4月27日)についての記事がThe Diplomatのウェブ・サイトに掲載されました。

以下のリンクアドレスからご覧いただけます。

http://thediplomat.com/2017/05/abes-diplomacy-at-a-crossroads-the-hidden-side-of-the-japanese-russian-summit/

2017.05.12

Eurasia Border Review 7(1) 刊行

境界研究ユニット(UERJ)が刊行する英文学術誌であるEurasia Border ReviewのVol. 7, No. 1が刊行されました。日本、インド、アメリカで活動する研究者たちによる、論文3本、書評1本が収録されています。論文では、グルジアと南オセチア間の境界化、シリア市民戦争勃発後のトルコの国境警備体制の変化、ベーリング海域における米露関係の発展といったテーマが扱われています。そのほか、今回はボーダー・ジェンダー研究に関する特別コーナーが設けられています。すべての論考がこちらのウェブページからダウンロード可能です。

2017.04.27

UBRJセミナー「越境災害」開催される

UBRJセミナー「越境災害」開催される

 昨年度まで境界研究ユニットで助教として活躍されてこられた地田徹朗さん(名古屋外国語大学准教授)による、セミナー「越境災害:アラル海地域の復興はどうあるべきか」が開催されました。司会は地田さんの後任として4月から赴任したジョナサン・ブルさんが担当し、20人近い参加者がありました。

 地田さんはもともと歴史研究者として研鑽を積んでこられた方ですが、本ユニットでボーダースタディーズの事業とかかわることにより、地理学にも覚醒され、本報告でも中央アジアの境界地域における環境問題の越境的アスペクトを、自ら考案したモデルを使いながら分析するなど、環境地理学、あるいは政治地理学を彷彿させる内容となりました。また報告は巡検での成果やツーリズムの試みなど盛り込むなど、聴衆を飽きさせない展開で構成されていました。質疑応答もフロアから鋭いものが多く、アラル海の越境災害が(チェルノブイリがそうであったように)ソ連解体に与えた影響を問うものなど活発な論議がなされました。地田さんが名古屋の新しい職場においてボーダースタディーズの旗を立て、研究コミュニティの輪を一層広げてくださることが期待されます。

(岩下明裕)

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2017.04.19

和文査読誌『境界研究』7号の刊行

和文査読誌『境界研究』7号の刊行

 cover.jpgUBRJが刊行・編集を行っている和文査読誌『境界研究』7号が刊行されました。論文2本、研究ノート1本、資料紹介1本、書評2本が収められています。古文書や統計データを駆使したものから、オーラル・ヒストリー(インタヴュー)の手法を利用したものまで、研究対象へのさまざまな取り組み方も興味深く、中身の濃い充実した内容となっています。収録されている論考は以下の通りです。こちらから全ての論文のダウンロードが可能です。なお、『境界研究』は次号8号の論文・書評の投稿を募集しております。ご関心のある方は編集部(saitok[at]slav.hokudai.ac.jp)にご連絡ください([at]を@に置き換えてください)。

[論文]

村上亮 オーストリア=ハンガリー二重君主国による「最後通牒」(1914年7月23日)再考  ― F. ヴィースナーの『覚書』にみる開戦決断の背景 ―

和田郁子 港町マドラスにみる「境界」  ― 17世紀のクリスチャン・タウンと「ポルトガル人」 ―

[研究ノート]

南波慧 EU国境地域における<境域>のポリティクス   ― 欧州移民規制レジームの構築とチュニジア人難民 ―

[資料紹介]

菅野敦志 沖縄出身米留経験者の台湾疎開  ― 伊志嶺朝三オーラルヒストリー ―

[書評]

近藤祉秋 大石高典著『民族境界の歴史生態学:カメルーンに生きる農耕民と狩猟採集民』

薮野祐三 陳天璽、大西広之、小森宏美、佐々木てる編著『パスポート学』




2017.03.15

北大ミュージアムクラブMouseionが国境観光展示の解説を実施!

北大ミュージアムクラブMouseionが国境観光展示の解説を実施!

 北海道大学の学生サークルで、総合博物館の展示解説ボランティア等を主な活動としているMouseion(ムセイオン)が、3月4日(土)、5日(日)に総合博物館のUBRJ展示ブースにて「国境観光」展示に関する一般市民向け解説を行いました。同サークルの北大文学部2年生の伊藤優衣さんより、展示解説の様子についてレポートの投稿がございました。こちらからぜひご一読下さい。レポートにもあるように、一般市民の方から「国境のイメージが変わった」という感想もあったとのことで、これは展示を組織しているUBRJがまさに意図していることであり、学生さんによる解説が的確なものだったことを物語っています。伊藤さん、ご投稿ありがとうございました。

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2017.03.07

UBRJセミナー「旅する木彫り熊~アート・ツーリズム・境界~」大盛況のうちに開催

UBRJセミナー「旅する木彫り熊~アート・ツーリズム・境界~」大盛況のうちに開催

 2017年3月4日(土)、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター大会議室とラウンジにて、UBRJセミナー「旅する木彫り熊~アート・ツーリズム・境界~」が開催されました。スラブ・ユーラシア研究センター境界研究ユニットとアイヌ・先住民研究センターとの共催で行われました。土曜のお昼過ぎという時間帯にもかかわらず、80人もの方にお越しいただきました。UBRJセミナーとしては久々の境界「表象」に関連するセミナーです。
 セミナーではまず、木彫り熊研究の第一人者である大谷茂之(八雲町木彫り熊資料館)からお土産品としての木彫り熊製作・販売の歴史的な展開についてご報告をいただきました。「お土産品」という括りになると、大正時代に八雲町に徳川義親がスイスから木彫り熊を持ち帰り、冬季の入植民の収入源として彫らせたというのが発祥でした。しかし、アイヌは、熊を神聖な動物として尊び、神事に用いるイクパスイ(捧酒箸)といった祭具に熊を彫ることもあり、旭川を中心としてより豪快な熊の木彫りを生産するようになり、北海道の定番のおみやげ品となっていったということが分かりました。また、現役の木彫家である荒木繁さんを交えたトークセッションでは、山崎幸治(アイヌ・先住民研究センター)のモデレートによって、ご苦労をされた彼の人生遍歴や木彫の作風・素材や道具について分かりやすい紹介がなされました。そして、木彫り熊の「リピーターを増やす」ことの必要性、つまり、おみやげ品という括りを脱して、造られたものが評価されなければならないという、木彫り熊の意味合いが変容している現在と、木彫の後継者不足に悩む未来の問題点などを知ることができました。このように、セミナーは、木彫り熊の過去・現在・未来について包括的に知る貴重な機会となったと思います。
 ボーダースタディーズに絡めますと、本セミナーから、木彫り熊が醸し出す何かエキゾチックな北海道やアイヌを表象する「アイコン」のようなものが、お土産品の質の変容(よりコンパクトなものが好まれる傾向など)、流通・通信の発展などによって現在進行形で変容しつつあるということが重要なポイントだと考えられます。同時に、実際に彫り続けている荒木さんのようアイヌ民族の木彫家さんたちは、やはり「アイヌの文化」として木彫り熊を守り続けてゆきたいという強い気持ちがあることも分かりました。
 セミナー後、センターのラウンジでは、荒木さんの物産展での実演で鍛えられたという軽妙なトークと共に、ミニ熊の木彫りの実演も行われ、来場者の方々は熱心に見入っていました。荒木さん曰く、「こんな人だかりの前で彫ったのは初めてだ」と感激していただきました。
 そして、ラウンジで展示された100頭を超える大小の木彫り熊の展示はご来場いただいた皆様にたいへん好評でした。ただの木彫り熊と言うなかれ。地域ごと作家ごとに表情・毛並みなど多種多様な木彫り熊が存在することが分かりました。そして、これらは山崎先生のご両親が北九州市で収集されたもので、まさに日本中を旅して北海道に「里帰り」してきた熊さんたちです。
 セミナーではアンケートも集めましたが、「またこのようなセミナーを開催して欲しい」と好評価をいただきました。山崎先生、荒木先生、大谷先生、そして、準備段階から当日のロジまでお手伝いいただいたスタッフの皆さま(所外の方にもお手伝いいただきました)、本当にありがとうございました。そして、お越しいただいた来場者の皆様に心より感謝申し上げます。

 大谷茂之先生によるセミナー参加記もぜひご覧ください。こちらをクリック!
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2017.02.15

エドワード・ボイル氏によるCAFS/NIHUセミナーの参加記をアップ

エドワード・ボイル氏によるCAFS/NIHUセミナーの参加記をアップ

 2017年2月5日(日)、九州大学アジア・太平洋未来研究センター(CAFS)と人間文化研究機構北東アジア地域研究北大スラ研拠点が共催し、CAFS/NIHUセミナー「Debunking the myths of Northeast Asia's borders」が九州大学西新プラザで開催されました。セミナーには日韓を中心とする北東アジア地域を専門とする国際関係論・政治地理学の研究者が集い、沖縄について、そして安倍・プーチン会談で注目されたロシアの対日外交について報告と議論がなされました。CAFS助教のエドワード・ボイル氏による詳細な参加記を受領しましたので、こちらからダウンロードしてご一読下さい。

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