サハリン北東部大陸棚の石油・ガス開発と環境W

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吉田:ご紹介いただいた、指導漁連の吉田でございます。この研究会には前回から参加させていただいております。私が所属するのは指導漁連といって、漁業の指導部門を担当している連合会ですが、昨年の5月に、網走でサハリン油濁対策のフォーラムを開催しまして、その時に村上先生と北川先生に講師になっていただきまして、大変お世話になりました。それ以来、先生方にいろいろご指導いただいております。実は、お手元に北海油田の現地調査報告書というのをお配りしているのですが、これは実は去年の10月に、私ども漁業者団体で、いわゆるサハリンの油濁事故対策会議を設置しております。この会議でサハリンの油濁対策を検討して、特に、オホーツク海を中心にして、サハリン沖油田開発については危機感を持っておりまして、何とか、サハリン油濁対策というものを漁業者側としても、声高く、国等に求めていってはどうかと、そのような背景を持ってこの対策会議というのを作ったわけです。この対策会議の中で議論した中で、まず北海油田というものが念頭にあったわけです。というのはご承知のように北海道というのは非常に漁業がさかんな地域です。北海道というよりも日本自体が、世界有数の漁業国ですけれども、ノルウェーもご承知のように世界有数の漁業国であります。しかも北海は昔から魚の豊富な海だということを聞いております。その北海で、北海油田という極めて大規模な海底油田が、何十年も操業しております。私たちは漁業が専門ですが、石油産業についてはまったく素人です。我々がまず疑問に思ったのは、なぜあの北海という漁業の豊かな海で、海底油田が何十年も操業して、しかも石油産業と漁業が共存しているのか、共存し得るのかということに素朴な疑問を持ったわけです。それで、まず北海に行って、北海油田の操業と漁業というのはどういう形で何十年も共存し得たのか、その実態を少しでも見てみようと言うことで、去年の10月に行ってまいりました。訪問メンバーはオホーツクの漁業の代表ということで私を入れて7名でした。その内容について、かいつまんで報告させていただきたいと思います。時間があまりありませんので、報告書については後ほどご覧いただきたいと思います。

 ノルウェーはご承知のように、非常に昔から漁業の盛んな国ですけども、ABCDEは大陸棚ゾーンということで、ノルウェーの200海里の漁業水域があります。本土のいわゆるABCという海域とヤン・マイエンという島を中心にした200海里、それからスバールバルというDの区域ですけれども、皆川先生もおっしゃっていましたけど、ノルウェーとロシアが国境が未確定な部分もあるということで、たぶんロシアとノルウェーということで、どういう使い分けをしているのかはわかりませんが、いわゆるDの区域はスバールバル諸島を中心にした200海里ということで、大きく分けるとこの5つの海域、これがノルウェーの自らの大陸ゾーンということです。それからその下に、小文字でabcとありますが、境界線を挟んだ、いわゆるノルウェーとロシアとの調整海域というか、そういうような海域で漁獲をしているということで、数値が出ております。平均すると、ちょっと古いデーターですけれども、1994年から96年の平均で250万t、ノルウェーの200海里の中で190万t、いわゆるECとの関係のゾーンで35万tになっております。アイスランド、ロシア、それにフェロースというデンマークの海域、さらにカナディアン海域を含めて250万tの水揚げがあるということです。世界の漁業生産国のなかで、中国を筆頭にノルウェーは10番目に位置しております。ちなみに日本は4番目ということで660万tの水揚げがあります。かつては日本も1,000万tを超える水揚げをしておりましたけども、いわゆる遠洋漁業だとか沖合漁業は今どんどん縮小しておりますので、660万tにとどまっております。1996年のデーターですけども、多分ノルウェーは徐々に水揚げが増えておりますし、日本は逆に若干水揚げは低減気味だということで、このような状況になっております。ノルウェーの漁獲量は、1997年には280万tをちょっと超えているということです。最近の10年間を見ますと、1990年に150万tをちょっと超えるくらいという、底を打ったという感じで、近年、水揚げは順調に伸びております。ノルウェーでは養殖漁業による水揚げが、最近、非常に増えてきております。特に養殖漁業の主体はアトランティックサーモンになっておりますけども、その水揚げが現在では30万tを超えるぐらいになっております。1980年ごろに養殖サーモンがスタートしまして、1973年にいわゆる養殖に関する法律がノルウェーで制定されまして、アトランティックサーモンの養殖が徐々に増えていったということです。スタートの1981年のころはせいぜい1万tぐらいの水揚げであったものが、98年には35万tぐらいということで、まさに右肩上がりで、アトランティックサーモンの養殖生産が増えていることが読み取れます。生産額でみますと、魚類と魚類加工品の合計が、大体250億クローネということで、日本円にして3500億円ぐらいの水揚げが現在あります。ノルウェーの輸出総額に占める魚類の輸出額は1997年には7%ですけども、翌98年には9.1%と、魚の比率が上がっています。ということは、原油と天然ガスが48%になっておりますけど、原油価格が下がっておりますので、魚の輸出が比率としては増えているということで、1998年には9%を超えております。逆に原油と天然ガスの輸出額の比率は若干下がっております。主な魚の輸出先ですけれど、250億クローネのうち、EUが145億クローネということで、圧倒的にEUに対する輸出が多いのが特徴です。その他の国ということで、日本向けが、27億クローネと大きな割合を占めています。このうち10億3千万クローネは養殖のサケの輸出です。12億クローネが冷凍のサケとニシンということで、アトランティックサーモンとニシンとで22億クローネということで、日本に対する輸出のほぼ8割ぐらいは魚で占められています。

 ノルウェーの漁業者の数ですが、漁業者の数が減っておりまして、一種と二種専業と二種兼業がありますが、第二次大戦後の1948年に8万5千人いたのが、半世紀で4分の1に減り、1997年には2万3千人まで減っております。1970年代に石油産業が活発になったわけですけれど、その頃に相当数は漁業から転業して石油産業に移ったということもありますし、戦後の漁業は盛んに資源を漁獲したということで、資源がかなり減ってきたために、単に石油産業への転業だけではなくて、資源が減ってきたということ、漁労技術がどんどん進歩してきたということ、資源に対して漁獲量が増えたということで、漁業者の数がこのように減ったといえます。この減り方についてはノルウェー漁業省の人のお話しですと、最近は減り方が減ってきたということです。大体数が安定してきたということは、漁業については資源もだいぶ回復してきたと見られます。一時、ニシンが枯渇したということですが、1970年代の初めのことです。ご承知のようにノルウェーはタラとアトランティックサーモンとニシンが主要な漁獲品になるわけですけれども、70年代初めにほとんどニシンが枯渇してしまったのですが、最近はニシンがかなり回復をしてきて、1993年には200万tに増えている。これはやはり資源を維持、再生産するために250万tが必要だということで、その8割ぐらいまでニシンの資源が回復をしてきているということです。1970年代に石油産業が活発になってきておりますけど、一方ではこういうふうに主要な魚種が資源の増産努力の結果増えてきているということで、この辺にノルウェーの漁業に対する考え方がしっかりしていると感じております。

 参考までに、北海道の組合数ですけれども、昭和57年からのデータですと、3万5千人弱の正組合員と準組合員がいるわけですけれど、正組合員の数でいくと3万5千人を若干切るという数で、平成10年度には2万5千人ということで、15年ほどで約1万人北海道でも組合員数が減っております。先ほどの日本に対するノルウェーからの魚の輸出が多いということですが、サケ、マスで24万3,000t、国内生産が24万tと、だいたいサケ、マスが全国で50万tという数字になっておりますけれども、その半分が輸入物だということで、国内生産は非常に厳しい。国内のサケの値段が非常に下がっているのは、この辺の輸入構成による所が多いと思います。参考までに、北海道の漁業生産というのは、非常に変動が激しいわけですけれども、北海道では最近では年間150万tです。かつて、昭和60年前後には年間300tぐらいまでになりましたが、北海道の遠洋漁業、沖合漁業がどんどん縮小しておりまして、ここ10数年で生産量が半分ぐらいに激減しているというところです。ノルウェーの漁業について説明を受けたわけですけれど、それではノルウェーの石油産業というのはどういうものかを次に伺ってきたわけです。ノルウェーの原油生産量は1997年ぐらいがピークで、それまで右肩上がりで増産されてきたわけです。その後下降線に入ったということで、あと数年は増産努力で更にもう一つのピークを迎えるけれども、その後はどんどん減産するのだということです。天然ガスについてはこれからまだかなりの埋蔵量が見込めるということで、原油については、現在の生産体制で行くと30年ぐらいで枯渇してしまうのではないかとみられています。天然ガスについては、まだ50〜60年の埋蔵量があるというような説明でした。ノルウェーの国家財政に原油がどの程度貢献しているのかをみますと、原油価格が高い時の96年、97年にかけては、国家収入に対する石油収入の比率は20%近くになるぐらい大きなシェアであったわけです。


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