サハリン北東部大陸棚の石油・ガス開発と環境W

Copyright (C) 1999 by Slavic Research Center,Hokkaido University.
All rights reserved.


司 会: なかなかロシアからのデータが集まらなくて苦労されてるのが良く分かります。20万分の1であればスラブ研究センターには全部そろってます。サハリンも含まれます。今のお話は20万分の1ですね。

質 問: 5万分の1の地図はあるのではないですか?

司 会: 確かに5万分の1のロシア全体の地図もあります。現在は一般に公開されていないようです。

司 会: 山村先生にもお願いしてこの環境アトラスが重要ですから特に開発の地域にはオットセイやトドなどのききゃく類が生息していますので、そのデータが必要なのですが実際のところ分かりません。それで今一生懸命探してはいるんですがこれはロシア側の専門家とコンタクトを取ってやるしかないですね。

報告者: 実際、その辺が難しいのでいろんな地図を借りまして環境容量を分析できればと思います。

司 会: ある程度のいわゆるセンシティブマップは出来るんですか?汚染が起こった時に海岸線がどういう状況になっていて海岸線の防除がどの程度できるのかに利用できるような地図ですが。

報告者: 先ほどのような細かいところまではできないと思いますけども、あとは地形図、地質図を組み合わせますとある程度のことは可能です。

司 会: 20万分の1の今の地図だったら海岸線に道路があるのがどうかってことは分かりますよね。

報告者: ええ、全然ないですね。全部調べますと全然ありませんね。大湿地帯ですから内陸からは海岸に行けません。

司 会: それは今年3月にサハリンの環境委員会のコスチェンコ部長を招いた時にそのことを言ってました。要するに海岸線についてから除去というのはだめだと、届かない時に除去しなければ誰も海岸線に入って行けないと言ってましたから。

報告者: 地形図を見ても海から除去するという形になりますから先ほどの除去の費用というのは大変困難な除去の費用になるんじゃないかなと思うのです。

質 問: サハリンでは除去の装備はなされていないのではないでしょうか?

司 会: 開発側がノグリキに倉庫を持っていてオイルフェンスその他を保管してるわけですね。これは海上保安庁の専門家が現地を視察してますので詳しいと思います。そこで装備されている量から見ると先ほどの湾がありましたけれどもあの入り江の部分を封鎖することだけを考えているようですね。

質 問: 湿地帯に漂着すれば一番除去が困難なのではないでしょうか?

司 会: それから大気汚染が非常に高いところがユジノ・サハリンスク市ともうちょっと北のところあります。あれはやはり石炭火力によるものではないですか?それから所得格差の点で95年と97年を比較されていて、開発地域が豊かになっているというお話がありましたが、開発行為が起き始めてお金がどんどんつぎ込まれるような状況はごく最近少し出ているわけで、97年という時点ではそれほど大きくはないのでむしろ全体のパイが小さいから若干食い込んでも大きく見えてくるということじゃないかと思うんですけども、いかがですか?

報告者: 開発行為の計画が公表されるだけでも、その影響が出て来ます。

司 会: 今までずっと長いこと、つまり1925年頃から陸上で石油開発を行ってきており、年間150万t程度生産してましたから、もちろん年によって変動がありますが、ひょっとすると97年当たりはよくなって、例えばそこで20万tとか30万tとか増えただけでもずいぶん違ってくるでしょうね。

報告者: 急に2年間で増産になるというのはないと思います。日本ではちょっと考えられません。世界でも例がない。それから先ほどの死亡率は国連の方もびっくりしていましたけれども、こんなに短期に出たっていうのは世界でも例がない。私の考えですから、データがないんですがソ連全体の問題なのかサハリンだけの問題なのかですね。

司 会: 全体の問題ですけれども、極東は特に死亡率が高くて男性の平均寿命は56歳、女性で60歳位ですので日本より20歳も違う。

報告者: それは事実です。医療資源の衰退で死亡率が高くなったというのは世界的に見て例がない。医療確保して良くなったという話はあるけれど、こういう極端に出たのはないということです。

質 問: 医療資源がサハリンから出て行ったんですか?

報告者: 平均所得がモスクワでは高いわけですからみんな出て行きました。その出ていった医者が多いところは死亡率が高くなってるというのは、端的にいうと根底に医療資源の流出が正確に出ているというのは今までいろいろ分析してますがないですね。

司 会: 大きな流れからいうと人口が最近減ってきて、10万人っておっしゃっていましたけれども、そういう出て行く人は他に職が見つかるような人達ですね。

質 問: 大塚さんの報告に関して、原油流出の想定をどのように利用するのか?

報告者: 実用面としては実際起きた時にどこに来るだろうかというのをできるだけ正確に予測することが重要であるから、その場合の備えということになると思います。北から風が吹けばこうなるかもしれない、南、東から吹けばこうなるかもしれないというような想定を、データベースの形で持っていれば、取り合えずあそこでもし事故が起きて今風がこのような状態だからこっちに来そうかなというようなふうに役立てられればと思っております。ただ底質近くの濃度がどのくらいになってどこが危ないということはやはりそこまでは実用には難しいと思います。しかし研究レベルでは少しづつ出来るようになってきていると思います。

司 会: 日本ではまだどこもやっておられないんですか?

報告者: そうですね。3次元では大きな範囲ではちょっと困難です。2次元で広くやっておいて、見たいとこだけ3次元でやるというような内容で何とかできないかなと思っています。

司 会: 北海を対象にしてる英国であるとかノルウェーとかあるいはアラスカではいわゆる危機管理計画(コンティンジェンシィプラン)が義務付けられていて、コンサルタントがその作成でビジネスになってるわけです。環境アトラスも取り込まれています。流出の想定ももちろんですが。日本の場合にはほとんど石油も出ないし、たまたま我々はある種の被害者的な立場でこれを一生懸命やろうとしている。そうするとなかなか民間ではお金を出しません。そうすると国なりあるいは地方自治体がどれくらい考えてくれるかということになってくるんですかね?

報告者: やはりその辺は追い風になると準備する点では非常に力になり得ると思うんです。

司 会: ただ、長期的に見る必要があると思うんです。つまりサハリン沖の開発は始まったばかりで2015年とか20年になって仮にうまくいくとすればどんどん井戸が出来てくるわけです。そうなってくると今のようなロシアの対応じゃとてもじゃないけど危なくてしょうがないわけで、全く考え方も変わってくると思います。

報告者: どうしても今、被害が被害がという方面ばかり目が行きがちなんですけれども、日本側の経済効果というのもやはり予測するようにやったらどうかなと思ってはいます。それを何か効率的に我々が動く際に役立てられればというふうに思うのです。

司 会: 実際にこういうもの作っていて客観的なファクターを埋めていきますね。そういう時にロシアに情報がないって悪口さんざん言っているけれども、実は日本でも必ずしもすべての情報がきちんと入るわけではない、入らないんじゃないかという懸念もあるのですけれども。そういう点ではどうですか?先ほどの漁獲高の統計によって違というのはこれはまた別の問題として基本的になかなか入ってこないっていうデータもあるでしょ?

報告者: そうですね。ですから実際に今度本当に例えばナホトカ号で3年以内に請求しなければならないという訴訟起きましたけれども、その時の被害をどうやって算定するかというのは実は根拠を向こうの基金の方に証明しなければなりませんから、その時に持ってる統計がいろいろあってそれぞれ違うと何を根拠に請求するかっていう方にも場合によっては問題になると思うのです。あとは底質がどうなってるか沿岸線にとってどうなってくか誰が調べるのかというとそれを誰が保持して誰が利用するかというのは国あるいは地方の自治体とかで決まってないですね。ですから誰もやってないから少し手をつけてみたんですけど何か出来上がっても、誰が使ってくれるのかというかなという心配もあります。

質 問: 1995年に国が国家緊急時計画というものを作ってその後97年にナホトカ号の事故が起きましたが、その緊急時計画がさっぱり機能しなかったのです。その反省を踏まえて、97年時暮れに改定しました。その改定した内容は、要するに各省庁、ナホトカ号の時22あまりの省庁が連絡会合というのを作りました。しかし指揮する省庁がありません。海上災害防止センターは汚染者との契約で出動するのですけれど。十分な態勢が出来ていません。ナホトカ号のような事故が起きた時に国なり自治体なり民間がパッと対応できる1つの機関がどうしても必要だと思うのですね。ノルウェーに行ってきて感じたのは国と自治体と民間の会社それに国家汚染管理局さらには防除資材会社21社ぐらいが入って、いざ事故が起きた時にはそこが一括して出動するという体制になっているんです。国と自治体と民間会社全部一つの組織を作っているんですよね。それに緊急時にいかにスムーズに対応できるかという実地訓練に重点を置いてるのですね。補償問題についても国が補償しています。ですから、この請求権は国が補償してますので国が面倒を見る。

質 問: スタットオイル社から説明受けた、今大塚さんがおっしゃったOSISというソフトなんですが、それには風向、風速が全部入っていて、それから資源が水産資源から野鳥からそういうのが全部そのデータに組み込まれて、ある地点で油が出るとそれがその時の風向風速なり流速だとかデータが入っていて、その油が時時刻刻どっちの方に流れて行くのかというその対象にはどういう資源があるのかという内容がきちんと組み込まれていて、第1段階ではとにかくここの部分をどうゆう体制で流出油を受け止めるかという多分こっちの方は後の後でいいんだというそういう優先度というのがすぐOSISというソフトで出来るというものなんですね。漁業者とも常に話をして資源の情報を新しいものに更新しています。しかし漁業損害の算定というのはやはり非常に難しいと言っていました。

司 会: 基本的にはいかに彼らは石油で稼いでるかということになり、重要な産業だから政府も無視できない。

質 問: 日本の場合にはサハリンで莫大な投資をしてますし、少なくとも三井・三菱が3.40%投資してますからそういう意味ではまさに日本が表現悪いですけど片棒かついだ生産ですからね。ですからそういう意味では地形的にはロシアの海域ですけれども、やはり日本が相当の投資してるわけですから、当然その投資に見合う利益を見込んでるわけです。ですから日本は危機管理体制をしっかりとらないと困るわけです。

司 会: そういう面では漁業だけを取ったら被害の影響はナホトカ号の比ではないですね。ナホトカ号が起きた後に富山に環日本海環境センターというのが出来まして、1ヶ月ほど前に国際会議をやって、私も「開発と環境」というパネルの主査したのですが、人が集まらない。分科会が5つくらいあるんだけど余り参加していないんです。つまりナホトカ号が終わってしまったら、みんな関心が薄れてしまってなかなか働きかけても集まらないという状況なんですね。

質 問: シュミレーションのモデルで風と海流の関係ですが、一般的には海流の影響が10%で風の影響が3%という数字が良く使われてるんですが、それとだいぶ違うような気もするのですが?

報告者: 今、この条件だけですと風の影響というのがだいたい3%〜10%弱、数パーセントと言われているのです。ここでは確か5%で計算してます。

質 問: 5%で計算してこういう結果ですか?

報告者: 例えば10m吹いて5%が風による移流の速度です。今回は秒速5mなので移流は20-30em/sです。海流がかりに1ノットくらいあれば、1ノットといえば毎秒50cmくらいでそれとの相関ということになると思います。

質 問: 海流の影響が小さいのではないですか?

報告者: ですからこの想定ではたぶん海流自体の値が小さい。

司 会: 海流のデータというのは海上保安庁にしかないんですか?

報告者: 現状ではそうですね。

報告者: いろいろ数学的に予測するという方法もないわけではないんですけども、しかしどの程度正しいのかというのは実測をして検証をしないと分かりません。

司 会: 今日みたいなディスカッションがあると、お作りになってる側にも参考になることが多いと思います。精度の高いものに反映されていくことを期待します。今日はどうもありがとうございました。


次へ